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恵(めぐみ)さんの釣書は、18歳と若すぎる。
高校在学中とあった。もっとも、私が当時24歳であったから、6歳年下の花嫁なら、そう珍しくもない。
これは、結婚相談所の仲人からの案件ではない。
社会党(社民党の前身)代議士から回って来た釣書で、恵さんの父親も、社会党代議士である。
当時の社会党を、現在の社民党から判断してはいけない。
政権取れないまでも、100を越す代議士を毎回輩出していた第2党である。
そして、私は、当時社会党のファンであった。
話があった時点では、本人が出てこない。深窓令嬢と言えなくもないが、娘18で親が縁談を追いかけまわすのは、不自然である。
まだ早いし、恋愛結婚で片付いてくれたら、親にとっては安上がりである。
が、親の弁では、正直な所娘は落ちこぼれで、勉強するんじゃなし、就活するんじゃなし、いつまでもフラフラしている。自分の事務所で使うしかない。
無理にでも結婚させて、ご亭主が市議選にでも出てくれたら、あれでも選挙の手伝いということにすれば恰好はつく。
タダの家政婦雇ったと割り切って貰ってやってくれんかと、親御さん、やや捨て鉢である。
親御さんの話だと、その代議士の娘婿になれば、社会党公認で政治家デビューが出来ると、遠回しに駆け引きに出ている。
この時は、神が囁いたとしか思えないが、この話、怪しすぎると、思った。
更に見合いは来月。
今の娘は、行儀作法もロクに身についていない、人前にだせる状態じゃないから、少し躾の時間が欲しい。
私は釣書記載の高校に行って、親がボロクソに言う恵さんを見ておこうと思った。
恵さんは、確かにその高校の生徒だったが、身柄は、高校になかった。
少年院にあった。
父親の政治力がかろうじて退学処分だけは、押しとどめていた。
来月が退院予定で、少年院から出て来たら、府立高校に復学、少年院で履修した単位と府立高校で履修した単位を合わせると、高校卒業基準を満たすから、素知らん顔して、府立高校卒業で、いきなり見合い結婚と、親は綱渡りを考えていたのである。
普通の家の娘なら、少年院送致が決まった時点で、高校の方は退学処分。
退院してきても、戻れる高校がなく、高校中退の人生を歩むか、よくて、検定高卒認定となる。
政治家の娘は、恵まれている。
少年院と正直に言ってくれれば、そうなった経緯如何では、貰わないでもなかった。
なにしろ、若い。
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