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金額だけはでかいが、法律的にはそう難しくない、相続事件を引き受けたことがある。
そう難しくないと言ったのは、隠し子がいて、私も相続人だと言い出したり、ひとりが余りに親不孝ゆえに相続人排除の申し立てがあったとかいう事例ではない。
分割案の分け前が気に入らない、もっと寄越せという銭金だけが争われている事件である。
それでも、家庭裁判所の調停を不調(調停不成立)で流して、地裁になだれ込ました原告の執念、鬼気迫るものがある。
原告が私の依頼人、被告が智美さんの旦那の依頼人である。
原告の主張はこうである。原告18歳の時、原告の家は貧しく、大学進学を断念せざるを得なかった。被告の妹が18歳の時は、家計に余裕が出来ていたため、大学進学が叶った。以降、妹の活躍で、姉妹の父の会社は、息を吹き返し、死亡時点では、相当の資産を積んだ。
姉も高卒相当に、妹も大卒相当に、相応に出世しているのだが、どちらも良縁には恵まれず、姉は未婚、妹はバツイチ、どちらも独身である。
いい歳こいたオバハンは、金だけが頼り、一銭でも多く分捕りたい。
相手方は、法定相続分通りの相続を主張するが、私の方の依頼人は、大学にやってもらった妹と私が同額とは、納得しかねる。大学の学費相当分は、生前贈与とみなして、差し引けと主張している。
妹の側も引かない。
私はしがない公務員だ。お姉さんは、お好み焼き屋を繁盛させて、私の何倍も豊かに暮らしているではないか、第一、姉は、家計以前に大学進学出来るオツムじゃなかったと、高校時代の成績証明まで持ち出して反論する。
けっこうややこしいじゃないかと、思う読者もいるだろうが、この程度は、単純な事件である。
全く問題がないなら、そもそも裁判にならない。
相手方は、法定相続分は渡すと言っているのだから、妹の言いなりになっても、姉である、私の依頼人の取り分は億を超す。裁判に勝っても、せいぜいそれに500万円上積み出来たら上等である。
私が当事者なら争わない。
が、法律以前に感情がもつれている。私の依頼人は、大学進学出来ていたら、もっと良い人生があったと思いこんでいる。
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