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「いますぐ、火を消して!こんなに強い炎だったら、貴方も燃えてしまう。」
男の子が抱えていた赤子が泣きだした。
その時私の聴覚は冴え渡った。
赤ちゃん特有の泣き声が空間に広がり、耳にこだまする。
そして、火は消えていた。
「お姉さん、この子助けて。お願い。僕の大事な弟なんだ。弟にこんな場所にいて欲しくない。僕はどうなってもいいから、だから、弟を助けて。」
人はこんなにも人を大切に出来るのだろうか。
命に変えて、守ることは出来るのだろうか。
「私の所に来たいのなら、泣き止め。そして、兄を助けたければ、私の手を掴め。」
言葉も分かりもしない赤ちゃんに問う。
殺す気は失せたが、助ける気など無い。
「オギャーオギャー、…………。」
泣いていたのに泣き止んだ。
にこっと笑って私の指を掴んだ。
「…スー……スー…。」
すぐに寝息を立てていた。
それでも、私の指を離さなかった。
***
「高良、ごめん。動きすぎた。周りが血の海になった。」
「お嬢様がご無事で何よりです。それより抱えていらっしゃる赤子と、背中に隠れている男の子はどうされたのでしょう。」
「拾った。」
「………すみませんが、もう一度お願いします。」
「だから、助けてくれって言ったから、拾ったんだ。」
「…麗峰家に置いておかれるという訳ですね。それでは、私が片付けている間、その子達の服を買っておいて頂けると嬉しいのですが。」
「分かった。買いに行ってくる。」
高良は男の子の耳元でなにか囁いた。
「僕くん、お嬢様をお願いいたしますよ。」
「分かった。任せて。」
「何をコソコソと話しているんだ?」
「男2人の秘密です。」
「ですっ!」
***
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