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***
「佑、学校はどうする?」
「ここで暮らせてるだけで幸せだから、行かない、働かせて。」
「そうか。……じゃあ、正直に答えろ。学校に行ってたか?」
「行ってない。」
「勉強をした事は?」
「あるよ。」
「その時誰かとした?」
「うん。」
「楽しかったか?」
「うん。」
「スポーツは?芸術は?」
「どっちも好き。」
「友達を作るのは…問題無さそうだな。」
「…将来の夢は?」
「麗峰家の役に立つ事。」
「それじゃあ、学校行け。但し高校からな。自分で行きたい高校は決めて。受験は、したい事があれば、言って。塾でも家庭教師でも、言えばさせる。」
「でも、」
「麗峰家に仕えるなら、最低でも大学までの知識がないと。」
「じゃあ、お嬢様が勉強したもの貸して。」
欲が無いというか、
新しい参考書がいるなら買うのに。
「お嬢様、これをお貸ししてあげたらどうでしょう?きっと、参考書より、参考になりますよ。」
「こんな紙切れでいいのか。」
「うわー、凄い。これあれば1週間前に詰め込んでも合格しそう!」
詰め込んだ所で使えなければ意味がないんだが。
***
「ゆーいー。起きたか。」
理由も無くニコッと笑う。
「お兄ちゃん好きか?」
カラカラと音が鳴るおもちゃを嬉しそうにふる。
「ここに来てよかったか?」
一生懸命小さな手を伸ばして私の指を掴もうとする。
利口なのはいい事だが、そのまだ純粋な心を忘れないで欲しい。
「高良、唯に話しかける時、英語で喋ってくれないか。」
「私はあまり唯とは話しませんが、それでもよろしいですか。」
「ああ。私が話すのは面倒だ。そのうち、高良のほうが話す事が多くなるよ。」
「ええ、分かりました。」
きっと、唯は留学する。
留学じゃ無くても、海外へ出る、そんな気がした。
***
「(まだ、やっと義務教育が終わる歳なのに、佑と唯には教育ママの様ですね。)」
佑と唯が来て心なしか明るくなったようなお嬢様を嬉しそうに見守る高良も、実はお嬢様と大して歳は変わらなかった。
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