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ようこそ。
我が主の麗峰家へ。
私は貴方を御案内致します、麗峰家執事、いえ、使用人でしょうか、高良と申します。
お連れする前に一つ、
―貴方は人を殺めようとした事はありますか―
左様に御座いますか。
ここだけの話、私の主人は人を、正確にはご自身を殺めようとした事があるのです。
お嬢様は確かにこの世に生きていらっしゃいますが、自分で自分を捨てた身です。
心が無くなってしまったのも当然でしょう。
どうか、お嬢様のお気に障らぬよう、お気をつけ下さいませ。
***
目の前に映るのは燃え続ける炎のみ
無駄に広い屋敷だったけれど、
崩壊寸前の家族だったけれど、
なくなってしまうと悲しいらしい。
それが、私が感じた最後の感情だった。
―悲しみたくなければ、
感情を消せばいいー
そういって、私は自分を消したのだ。
大きく燃え盛る炎を背景に、それより赤い血が流れていた。
いつしか指先が燃えていても、私はそれをただ眺めていた。
「お嬢様、お目覚めの時間でございます。」
私の手首には包帯が巻かれていたが、それ以外は外見上なんら変わりがなかった。
目覚めたベットも壁紙も装飾品も、だたそこに、そのままにあった。
変わってしまったのは私の内面か。
だが、何が変わってしまったのかわからなかった。
からっぽな感覚が何故か私に違和感を残した。
「今日から私が麗峰だ。」
半ば、反射的にこの言葉をつぶやいた。
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