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武将は海軍予備士官となる前、東北帝大の文学部に籍を置いていた事がある。
そんな武将の事であるから、頭領様こと烏天狗は
「さすが御館様、適材適所とはまさにこのこと」
…と、軍神中尉に昇進したばかりの武将の肩を、両手と羽でばしばし叩いて励ましたものである。
そして、武将が与えられた愛-113号機の機付長であるさとりの親方も
「御主にぴったりの御役目よのう武将」
…と、武将が何も言わない内から励ましてくれた。
だが蓋を開けてみると…
この日も武将は、梨緒が御台所頭の女中から宛がわれた庵に赴き、梨緒に勉強を教える…
筈であった。
因みにお屋敷のきまりごとや神仙界のしきたり、そして妖界の一員としての基礎的な心得を梨緒に教えるのは、御台所女中頭を務める雪女の役目である。
「なんと!
弾丸列車がそんなにあるのか瀬峰生徒!?」
「…だから新幹線です」
梨緒が内心呆れたのは言うまでもない。
きっかけは休み時間の雑談であった。
梨緒が自分の知る範囲の一般常識を武将に教える度に、武将はいちいち驚いては矢継ぎ早に質問して来るのだ。
初めのうちは
(鈴城先生にとっては未来の出来事だから…)
と、自分で自分に言い聞かせてはいたのだが…
(この人本当に大丈夫かしら…)
「スマン瀬峰生徒。
私は世事に疎くてね」
「!
じゃあ勉強して下さい!
それと人の心を勝手に読まないで下さい!」
ここは妖界、人間界の常識など全く通用しない世界である。
やがて二人の会話は途絶え、武将はバツが悪そうに漢文の教本を開くのであった。
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