真夜中のクルックポー

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私に話し掛けてるの?思わず周りを振り返って、また少年を見る。   「・・・はい、今日、この街に着いて・・・」   「もう帰っちゃうの?」   「ううん、ちょっと冷えたから、そこで温かい飲み物を買おうと思って」   私は自動販売機のある道路の方を指差した。   「奇遇だな。ボクも何か温かいものが飲みたいなって思ってたんだ」   彼は口元に笑みを浮かべる。 ゆっくり階段を上り切り、道路を渡った所にある自動販売機に向かうと、彼もガードレールの縁から腰を上げ、私の後をについてくる。 コインを入れ、温かいお茶を買うと、数歩後ろにいた彼が「ボクも飲みたいな」ともう1度呟いた。 お金を持っていなくて奢って欲しいのかなと思った。 軽装で手ぶらだったし、ぶらっと夜の散歩にでも出て来たようだった。 人気のない場所でこうやって巡り合ったのも何かの縁だと、「いいよ、買ってあげる。どれがいいの?」と振り向いた。
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