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「う~ん」
柔らかい枕の感触に嬉しくなって、思わずゆっくりと寝返りを打つ。
夢の中にでもいるような、軽くて柔らかい布団に包まれて幸せいっぱい。
「美鈴」
誰かが私の名前を呼んでいる気がする。
だけど上手くまぶたが上がらない。
「美鈴」
髪をすく優しくて大きな手がくすぐったい。
「ふふっ」
「美鈴、キスしてもいいか?」
たぶんこの声はあの人。
なんていい夢なんだろう。
「ふふふっ」
シャワーでも浴びてきたのか、頬に水滴が落ちシャンプーのいい香りがする。
ぼんやりしたシルエットに向かって両手を差し出すと、くすっと笑った声が聞こえてゆっくりと抱きしめられた。
触れる唇はとても優しくて、温かくて、心が満たされる。
離れていくのを名残惜しく追いかけたけど、戻って来てくれはしなかった。
「ごめん……」
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