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小沢先生には観覧車とキスはセットみたいなものだったのかもしれない。
巷の人たちと同じように。
別に付き合っているわけでもないし、私がとやかく言えることじゃないけど。
あの女性が恋人か、私のときみたいに患者か、職場の人かはわからない。
どこか普通より親密に見えたのは気のせいだろうか。
だけど考えてもわかることなんて何もなくて、小さなため息。
「私には関係ない、そう関係ない」
自分に言い聞かせるように呟いた。
窓の外は駅へ向かって家路を急ぐ人たちが忙しなく、車もこんな時間にもかかわらず絶えず走り抜けていく。
ビルの間から見える三日月が雲の向こうに見えなくなった。
もし違う歯医者に行っていれば、さっきの2人もこの景色の一部にしか見えなかったはずなのに。
運命とは皮肉なものだ。
「まだこんなところにいたのか」
急に頭の上から降ってきた声に顔を上げた。
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