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「酔いつぶれて俺にお持ち帰りされたくなきゃしっかり食べろ」
「な、なんてことを……」
お持ち帰りされたくないわけでもない私が、動揺するのをわかってないから怖い。
「冗談だよ」
「笑えません」
やけに機嫌のいい課長になんだかもうすでに振り回されている気がする。
敏感なんだか鈍感なんだか謎な人。
一晩一緒にいても全く手を出されなかった過去が頭を過った。
先に課長が酔いつぶれていたし、介抱ついでに私まで眠ってしまったんだけど。
ダブルで気分が沈む。
勝手に思い出しちゃっただけだけど。
「どうした、何かあったのか?」
「別に……」
「別にって感じに見えないけど」
「ちょっと……私にもいろいろあるんですよ」
そんなの、ちょっとイケメンな歯医者さんにデートに誘われて、夕日をバックに観覧車でキスされたけど、今さっきその人が凄い美人を連れて目の前を通り過ぎていきました。
なんて言えるわけがない。
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