2人きりの夜

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「だろうな。女子社員たちは髪型を変えた次の日なんかは妙に機嫌が良かったりするからな」 「気付いてたんですか?」 「当然だ。こう見えて部下のことはある程度見ているつもりだ。セクハラだなんて言われたら困るから言わないけどな」 たしかにみんなの仕事の進み具合とか、よくわかって絶妙な指示を出している。 荒木課長に髪型を褒められてセクハラだなんていう人はうちの部署にはいないと思うけど、それはあくまで荒木課長だから。 一般的にはセクハラと受け止める人もいるかもしれないのはたしか。 隣の部署の少し頭が寂しくなった課長はセクハラ課長と呼ばれているし。 部下を励ましているつもりみたいだけど、肩に触れるから嫌がっている人は多い。 そう思うと荒木課長は絶対肩に限らず男女ともに触らないし、必要以上に近づかない。 一部の例外を除いては……。 「そういえば今日佐渡君に何かしたんですか? 午後から妙に張り切ってましたけど」 最近元気がなくて、特に今日の午前中はため息ばかり吐いていた。 「あぁ、あいつは最近ちょっと上の空だったから、同期の石黒に仕事を振ったらやっと負けず嫌いの虫が目を覚ましたんだよ。本人に何か言うよりあいつら2人はそのほうが効果があるんだ」 「なるほど」 そういえば佐渡君は長く付き合っていた彼女に振られたって言ってたっけ。 .
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