心の距離

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「私とこうして離れてて… 不安になったりしない?」 私の質問に彼はふわりと微笑む。 『不安だらけだよ。 香織が一人で悩んでるんじゃないか 香織が一人で寂しいんじゃないか 香織が…誰かに 奪われるんじゃないかって いつも不安と戦ってる。 だけどな… 恭一の件で俺は思ったんだ。 俺と香織の間にある距離は 確かに遠いけど… 俺達はこの距離を 乗り越えようと逆に 心の距離を近づける努力をする。 もしも俺があのまま 本社勤務だったら… 俺と香織の心はこんなにも 短い期間で近づく事が 出来たのかなってさ』 彼の言う通りだ。 確かにこの距離があったからこそ お互いがお互いを思う気持ちを 何よりも大切にしたくて… だけどその思いが邪魔をして お互いが本音を言えない…。 黙り込んだ私に彼は 優しい笑顔を見せながら 静かに囁いた。
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