最後の言葉

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「その決意は絶対に、 揺らがないのか」と 冬木支店長に聞かれた時、 俺は微かに瞳を揺らしてしまった。 10年間生きて来た この香港の地に 俺の中で全く未練が ないかと言えばそれは嘘になる。 その象徴が… 沙織であった事を 冬木支店長は、恐らく 気付いていたのだと思う。 俺が香港で生きた10年は 全てが沙織だった。 別れてからもずっと… 心の中に住み続けていた 沙織という存在が どれほど俺を苦しめて来たか。 苦しんだからこそ そんなに簡単には 消せなかった事も。
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