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ようやく解放されて
彼と向かった空港の
ターミナル。
私と遥斗の姿に気付いた
小野さんが大きく手を振ると
ゆっくりと振り返ったその人は
にこやかな笑みを浮かべて
小さく会釈した。
あのショールームで見て以来の
冬木沙織さんの姿に
解ってはいてもこわばる身体。
そんな私に気付いたのか
繋いでいた手をぎゅっと
握りしめてくれる遥斗に
視線を向ければ
静かに頷きながら
柔らかい笑みを見せてくれる。
それにまたホッとして
私も沙織さんに笑みを見せて
会釈した。
「久しぶりだね、前島チーフ。
元気そうで何より」
あの頃と何ひとつ変わらない
冬木支店長の穏やかな笑顔と
それを隣で微笑みながら
見つめる沙織さんの姿は
遥斗が言ったように、
彼女が今、本当に幸せでいる事が
手に取るように感じられた。
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