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「もうじき今年も終わりだね」
湯畑の灯りに照らされながら
呟いた香織の肩を抱き寄せて。
立ち昇る湯煙を見つめながら
俺は心で思ったままを
言葉に乗せた。
「俺の今までの人生の中で…
一番幸せだと思える1年だったよ。
俺が仕掛けた浅はかな罠から
始まった俺達だけど…
お前と出会えた事も
お前とこうして今、
一緒に歩めることも
全てが本当に幸せだと思う。
この幸せを来年も再来年も…
俺たちが年老いて旅立つその時まで
毎年ここでこうして分かち合おうな」
微笑んで見下した
香織の瞳からは
大粒の涙が零れ落ちて行く。
「遥斗は…ズルい」
「は?」
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