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脱衣所で無言のまま
服を脱いだ康平さんは
堂々とタオルを肩に引っかけて
湯船の淵へと歩んで行く。
俺も負けじと服を脱いで
康平さんの横に並んだ。
「知っているだろうが草津の湯は
そこらの温泉よりも温度が高い。
特にこの公衆温泉は
数ある公衆温泉の中でも
かなり熱い湯だ。
俺も香織も子供の頃から
嬉しい時、悲しい時…
いつだってこの湯に浸かって
育って来た。
つまりこの湯は
俺や香織にとっては
命の湯って事だ。
どんだけ熱くても逃げるな」
康平さんの言いたい事は
痛いくらい分かっていた。
何があっても香織から逃げるな。
そしてその覚悟を
この熱い湯に身を沈める事で
自分に見せろと…
そう言ってるんだと思った。
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