帰郷

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思わず目を細めた俺を 不思議そうに見つめる香織に クスッと笑ってその手を繋いで ポケットに引き込んだ。 滑らないように気をつけながら ゆっくりと坂道を下って行けば 湯けむりに包まれるその一角。 「テレビで見た事あるでしょ? ここが湯畑だよ」 「うん。見た事ある」 湯畑を囲う石柵には 草津に歩みし百人なんて 著名人の名前が刻んである。 源頼朝や豊臣秀吉から 与謝野晶子や高村光太郎の文豪 石原裕次郎や渥美清の名優など 様々な名前の並びを眺めながら 歩いていると香織が俺を覗き込んだ。
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