壱ノ章

11/15
前へ
/20ページ
次へ
胃の中のもの全てが逆流している様な妙な感覚に、重くなった血液が体内を巡らず下降していく様な酷い悪寒。全身にびっしりと立っている鳥肌。 (な、なんか目の前が暗くなりつつあるんだけど) このままだと確実に倒れると察した飛和は、 一旦足を止めると重くなった頭を片手で支えて、朦朧としてきた意識を何とか呼び覚ました。 身体がすごく熱い。だが身体の表面の肌は雪の様にひんやりと冷たい。きつい酢の様な香りが鼻を突き上げる。 咄嗟に飛和は路地裏に身を隠すと、数十分程耐えてきたものを、存分に吐いた。 熱い涙がぼろぼろと零れ落ちる。胸が軋んだ音を経てて悲鳴を上げている。苦しい、苦しい、すごく苦しい。 自分の吐瀉物を間近で見下ろしたせいかまた吐気が込み上げてきた彼女は、ふらふらとそこから離れ、逃げる様に家へ帰った。 帰宅するや否や靴も脱がずに倒れ込むと、冷たい廊下に頬をつける。 (情けない…) 飛一に顔向け出来ない程の羞恥を覚えた飛和は、顔を真っ赤にしてのろのろとキッチンの方へ向かい、顔を洗った。 身体が、本心が、外気に酷い嫌悪感をその身に刻みつけている。 このままだとどうやっても確実に学校には入れないだろう。毎日あんな状態で学校へ行くなどと、殆ど拷問に近い。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加