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────その時、腹部に何かが触れている様な違和感をはっきりと感じた。
硬く、先程の冷水を連想させる様な冷たさを腹の下から感じる。
「?」
腕を立てて腹を上げ、その違和感の正体を確かめるべく視線を落とすと、飛和は眉を歪ませた。
(……本?)
そこにあったのは、厚めで文庫本程のサイズの本だった。
その表紙は無地で鮮やかな浅葱色、題名はどこにも書かれていない。
一度も見たことが無い本だ。飛一の本だろうか。
それにしても目が覚める程の冷たさなのに、なぜ自分は気がつかなかったのだろう。
そう不思議に思いながら手を伸ばしその本を掴み取ると、先程まで冷たかった本が飛和を認める様に、優しい温もりを彼女の掌に与えた。
不思議と惹かれる様な、よく分からない本だ。
早速読んでみようと小さく背中を丸めて三角座り。
読書が比較的好きな飛和は首を傾げながら、何となく興味を持ったその本の表紙を捲った。
新品の様に真っ白な見開きページが視界に広がる。そこにはこう書かれてあった。
『壬生狼 ‥ミブ オオカミ』
その言葉が何を示すのか、飛和にはまだ理解出来ていない。ただそのページの中央で大きな存在感を示す文字を瞳に焼き付けた。
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