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───刹那。
凡ゆるフィクション作品に度々起こるハプニングが、男を襲った。
鼻先を掠める様に、視界の上から下へ瞬時に過る、謎の赤い影。
怖ろしい程に研ぎ澄まされた反射神経で男が仰け反るのと同時に、その影は地に落ちた。
今まで聞いてきた星の数程ある音の中でも、最も盛大な衝突音が男の鼓膜を小刻みに揺らす。
先程まで何も無かった足元の地面に転がっているのは、この辺では見かけない顔の、奇妙な服装をした娘だった。
…………そう、空から女の子が降ってきたのである。
「……、
はっ!?」
数秒間溜めて素っ頓狂な声を出した男。アホウの様に口をぽかんと開けて、ぐったりと屍の様に動かない少女を呆然と見下ろした。
まあ状況が状況なだけに、仕方のない事であろうが。
捲り上がった赤いジャージの袖や胸元まで下ろしたファスナーから覗く、鳶色に滲んだ不潔な包帯。
頬や鼻、額と所々に見える痛々しい古傷。
それらさえ無ければ、少女は充分にもてはやされる程の容姿と可憐な雰囲気を兼ね備えていた。
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