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「……娘」
その声に意識が引き戻される。暖かく降り注ぐ白い日差しを受け止める為、薄目を開けた。
霞んだ視界にぼんやりと映るのは、天井の木目と大きな穴のみ。
蒲団で横になっている少女──もとい飛和は、漠然として余り回らない脳をぬるぬると動かし、今の状況を無意識の内に把握しようとしていた。
天井に木目が浮き出ているという事は、今居る部屋はおそらく木造。
板と板との間に出来た隙間の妙な広がり方といい大きさといい、大分この天井は痛んでいる。
自分が今まで住んでいた新築のマンションの天井とは、到底考えられない。見た事も無い天井だ。
(知らない天井だ)
どこかのSFアニメで聴き覚えのあるフレーズを思い出した飛和は、何だか可笑しくなって少し笑った。
正に今、そんな状況だからだ。
「……娘」
隣に誰かが居るのだろうか。
こもっていて聞き取り辛いが、大分近くだと認識出来る男独特の低い声が、飛和に呼びかける。
「はい」
大してそこまで興味は無いのか、低い声の主には見向きもせずに、生返事のみを送って天井の木目を数え始めた飛和。呑気なものである。
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