壱ノ章

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---------- 翌日、午前九時。 決して広くないマンションの一室で一人残されていた飛和は、昨日の夕食の出来事とこれからの事をぼんやりと思い浮かべながら、せっせと掃除機を部屋の隅々までかけていた。 お兄ちゃんは仕事でとっくに居ない。今日は深夜まで帰って来ない筈だ。 (これからはすごく忙しくなるね……。生活リズムを整えないといけないし、すごく勉強しないといけないし、何より外に慣れないと) ベランダに来た飛和は、中々高いフロアから見慣れた街の風景を見下ろし、溜息を吐く。 やるべき問題は沢山あるのだ、考えるだけで鬱になりそうである。 (外に慣れる、か……) ふっと何かを考える仕草をすると、部屋に戻り掃除機の電源を切った。 回転ハンガーから縞模様のカットソーを選び、身につける。 思いついたら即行動、だ。 「よしっ」 鏡に映った自分を見て、気合を入れる。 大丈夫、服装は全然変じゃない。若干体が震えている気がするが、気にしたら負けだ。 「お兄ちゃんに聞かせられる話、また増えるな」 後向き思考になっていく自分に言い聞かせる様、独り言を呟きながら玄関の扉を開けた次の瞬間、 真っ白の陽射しが飛和を包んだ。余りの眩しさに目を瞑る。
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