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その直後、彼は白目を剥いてその場に膝から崩れた。
腰だけを上げるような形で床に臥せる。口の端から泡が吹き出ていた。
「こりゃあ、立ちくらみだな」
でぅ、と猫は血を吐いた。ああ、カーペットが。
「……弱っ」
「まぁそう言うな。コイツもコイツなりに頑張ってんだ。尤も、魔界では最弱とされているがな」
なんの気兼ねもなく猫と会話している自分に驚いた。というか、やはりこれは猫なのか?
「それで。あなたは、この貴公子の何なのさ? ただの猫だとは言わせないよ」
「俺かい? 俺は……んー。○○ってところさ」
「○○を教えてよ」
「世の中にゃ知らない方が幸せな事が多々ある。これもその一つだ。――時に」
猫が髭をぴょこぴょこ上下させる。
「こいつの貧血が改善されるまでこの家に住ませてやってくれんか?」
「帰れ」
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