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最初こそ、血を吐く猫とは、なんて想像を絶する超生物なんだと驚いたが、吸血鬼の彼が「猫とはこういうものだろう」と平然と言うものだから、人と吸血鬼の文化の違いを痛感しながら調子を合わせた。
彼のスーツが血で湿っているのは返り血だとかではなく、猫によるものだった。
「そんな事よりも人間。血だ、血をくれ」
「あなた今輸血しているじゃない」
ソファに両足を組んで座っている彼の横には療養中の病人が引きずる鉄の「アレ」があった。痛々しさとカラカラ後をついてくる愛らしさが同情を誘う、キャスターつきのアレだ。彼の持参品。
今思えば、居座る気がマンマンだったのかとため息が洩れてしまう。
「寝ぼけた事を。貴様は呼吸をするのにわざわざ酸素マスクを使うのか」
「よくわかんないけど。血がありゃいいのね、血が」
確か、血に関係が深い栄養分と言えば鉄分だ。冷蔵庫を開く。
◆◆◆
「美味だ。血とニラが」
昨晩の夕飯のニラレバをほうれん草と和え、上に「人工の血」と偽ってケチャップをかけた、何とも世紀末な珍料理を彼はモッサモッサと租借していく。
一番肝心なレバーとほうれん草を皿の隅によけて。
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