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「輸血した割りには顔色が変わらないけど」
「そうだな。ここのビニールにはRh(+)とあるが」
ちらりと横へ視線をやる。
「私はRh(-)だ」
「それって大丈夫なの?」
「大丈夫な訳がないだろう。貴様の家に来たのはしっかり血液型が一致したからだ」
「何でそれを輸血しているの?」
「さっきから言おうと思っていたが、人間、私は輸血なぞしてないぞ」
「……いや、してるじゃない」
ぞわり。
なんの前触れもなくひんやりとした感触が背筋をなぞった。
彼の顔に不適な笑みが貼りついている。足が最初から生えてなかったかのように動かない。
「いきなり真の姿で現れては家に入れてもらえないからな。このように弱々しく見せたのは同情を誘うためだ」
彼は猫とソファに座っているだけなのに。その背後の異様な影はうねり、黒いオーラを醸し出している。
彼に釘付けになっている。恋愛表現的な意味合いではなく。まさに蛇に睨まれた蛙とはこの事。
「こうやって輸血を装って真の姿となる為の力をゆっくり蓄えていたのだ。感謝するぞ人間。」
彼が猫を軽く振り払った。「なんだよ」と言って猫が飛び降りた。やっぱり人語を喋るのか。
足が言うことを聞かない。脳の指令を拒絶している。
――彼が、ソファから腰を上げた。
「そして、やはり愚かだな人間。この私に
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