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「ここで、ある程度まで成長すると次の過程に運ばれます」
工場長はガラス越しに見えるガラスケースに収められた生命体をペンライトの明かりで指差した。そこには、確かに成長した生命体がいた。その生命は人の形を成していた。ガラスで仕切られた部屋ではロボットが忙しそうに動き回り、その『人』を次々と別の部屋へ運んでいた。工場長らはその後を追うようにして次の隣の部屋へと移動した。
隣の部屋は神秘的だった培養室とは異なり、ゴチャゴチャした機械が幾つもあった。ガラスケースに収められた人は、そのままゴチャゴチャした機械へとケースごと入れられた。ただ適当に入れている訳ではない。機械はケースが一つ、一つ入るよう仕切られている。その中に投入されたケースに収められた人は溶液を介して電極を浴びせられるのだ。電極はコンピューターに接続されていて、電流、電圧共に完全に制御されていた。
このSFのような光景に生徒はまたしても驚かされた。
「ここでは、生み出された『人』に対して機械を使って教育していく部屋になっています」
生み出されたばかりの『人』は知力も体力も本来の人間より劣っていた。それを、補う為に電気を使って筋肉を刺激すると同時に脳にはある程度の知識を与えるのだった。その知識は多すぎてはいけない。あまり、多く与えすぎれば『人』は人になってしまうから。
案内してもらった部屋は少しだけだった。第二工場は主に培養と人工的な肉体強化を目的とした施設である。それ以降の行程は窓から別の工場に『人』が運ばれる光景しか見られなかった。けれど、生徒は満足していた。普段、見ることができないクローン人間を造る工場を見学することができたのだから。
小学生向けの工場見学を終えると、工場長はレクリエーションを行う為、講義室へと生徒を引き連れてた。そこでは、工場長は人類がクローン人間を造る過程に至った話をした。難しい話ではあったけれど、滅多に聞くことのできない話に生徒は真剣に耳を傾けていた。
講義が終わると、今度は生徒からの質問タイムに移る。生徒は手を挙げて工場長に次々と質問を投げかける。工場に関することから他愛のない話まで生徒は好奇心の赴くまま、工場長に質問した。工場長はその質問、一つ、一つ、丁寧に答えてくれた。
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