道程

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夕方志保を連れて家を出た。 駅前のいつもの居酒屋近くのカフェに入って これからの事を説明する。 「なんでカフェ?飲み会じゃないの?」 「いや、あの店に行くんだけど、奴等を驚かせたいから おまえはちょっと遅れて入って来てくれ」 道路のはす向かいの店を指して言った。 「えー、あんまり目立ちたくないのに」 「あいつ等は俺は絶対結婚しないと思ってるから 一泡吹かせてやりてえの。 俺が携帯をワンコールさせたら即折り返せよ。 後は指示するから。 それから、できるだけ下向いて顔隠しとけ。 ナンパ野郎を近付けんなよ」 そう言って待ち合わせの居酒屋へ向かった。 店に入って角田の名を告げると、 割と大きめの座敷に通された。 「お、やっと来た。徳、こっちに座れよ」 角田が手招きする。 それにしても、いつもは集まっても4.5人なのに 今日は倍はいるんじゃないのか? 予定と違うな。 角田の横には田嶋雅子。いや、もう角田雅子か。 「久しぶり、相変わらず男前だね」 「よう、おまえもな、少しは主婦っぽくなれよ」 「勇生はわたしにそんな事、求めて無いからいいのよ」 「角田、こんな事言ってんぞ!」 「いいんだよ、マーコはこのままが一番」 「はっ、尻に敷かれてんな」 笑いながら乾杯する。 そろそろ志保を呼ぼうかと思った時、 少し離れた所に座っていた女が ビール瓶を持って隣に来た。 「徳永君久しぶり。わたしの事覚えてる?」 そう言ったのは卒業後、俺に告ってきた女。 何て名前だったっけ?
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