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「ーーな、んだ。今の……?」
長い眠りから、深い海の底から浮上するような、そんな感覚と共に目を覚ます一人の少年。
ガバッ、と。勢いよく上体を起こし、辺りを見渡してみるが特に変わった様子は無い。
それはもちろん『当たり前』の話だ。何故なら彼が見たものの全ては所詮『夢』でしか無いのだから。
全身を汗でびっしょりと濡らしながら、ベッドから降りて大きく伸びをする。
「……変な夢だったな。つーか誰なんだよ『 』って。名前最後までわかんなかったし、あの天使みたいなヤツの言ってたことも意味わかんねぇし……」
よろよろとした足取りで、カーテンを開け日の光を部屋全体へと行き届かせる。
時刻は午前6時30分を回った頃。
白く輝いているように見える太陽を前に、同じ《太陽》の名を持つ少年はベッドの上からメガネを取り、それをかける。
「……まっ、こういう時は書くのが一番だな。頭ん中の余分な情報は書いて一旦置いておくのが天才の常識だ」
そう呟きながら、太陽は椅子に座り、机の上から一冊のノートを取り出す。
思いついたことを適当に書き記すためのノート。そこに書かれてあるものは大体くだらないものばかりだが、こうして何か一つでも書いておいておくことで、後に役立つ可能性があるかもしれない。
ーーなんといっても、この国は多くの『能力者』が暮らしている、能力者のために作られた『世界』なのだから。
故に、一つのアイデアがこの国の役にたつかも知れないし、逆にこの国を滅ぼしてしまうかもしれない。
そうした分水嶺の中で、少年が見た夢こそが、そのどちらかを担う『ヒント』になっているのだが……。
「……いや、待てよ? これってもしかして、神さまが俺に『作家になれ』と仰ってくれてるのか!? だからこんなワケのわかんねぇ夢見ちまったのか!?」
ーーもちろん。『まだ普通の少年』である彼がそれに気付けるはずも無い。
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