第0話「夢」

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__________________ … …… ………… 「ーーな、んだ。今の……?」  長い眠りから、深い海の底から浮上するような、そんな感覚と共に目を覚ます一人の少年。  ガバッ、と。勢いよく上体を起こし、辺りを見渡してみるが特に変わった様子は無い。  それはもちろん『当たり前』の話だ。何故なら彼が見たものの全ては所詮『夢』でしか無いのだから。  全身を汗でびっしょりと濡らしながら、ベッドから降りて大きく伸びをする。 「……変な夢だったな。つーか誰なんだよ『  』って。名前最後までわかんなかったし、あの天使みたいなヤツの言ってたことも意味わかんねぇし……」  よろよろとした足取りで、カーテンを開け日の光を部屋全体へと行き届かせる。    時刻は午前6時30分を回った頃。  白く輝いているように見える太陽を前に、同じ《太陽》の名を持つ少年はベッドの上からメガネを取り、それをかける。 「……まっ、こういう時は書くのが一番だな。頭ん中の余分な情報は書いて一旦置いておくのが天才の常識だ」  そう呟きながら、太陽は椅子に座り、机の上から一冊のノートを取り出す。  思いついたことを適当に書き記すためのノート。そこに書かれてあるものは大体くだらないものばかりだが、こうして何か一つでも書いておいておくことで、後に役立つ可能性があるかもしれない。  ーーなんといっても、この国は多くの『能力者』が暮らしている、能力者のために作られた『世界』なのだから。  故に、一つのアイデアがこの国の役にたつかも知れないし、逆にこの国を滅ぼしてしまうかもしれない。  そうした分水嶺の中で、少年が見た夢こそが、そのどちらかを担う『ヒント』になっているのだが……。   「……いや、待てよ? これってもしかして、神さまが俺に『作家になれ』と仰ってくれてるのか!? だからこんなワケのわかんねぇ夢見ちまったのか!?」    ーーもちろん。『まだ普通の少年』である彼がそれに気付けるはずも無い。
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