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「3段目足してちょうだい!」
「はい!」
ベテランの沢登が張り上げた声に答え、私は懸命にチラシの束をしごいた。
印刷時のインクでくっついている部分を剥がす為だ。
最大23種類の広告チラシを、丁合機と呼ばれる機械に途切れず詰まらさぬようにセットするには、連携プレーが必要とされる。
そして機械の繰り出す騒音の中で、作業メンバーが意思の疎通を図るには、自ずと声を張り上げながらの作業となる。
機械が急に止まると、騒音に負けじと張り上げていた者の声は、普通ではあり得ない大きさでその場に響き渡ることになる。
予定枚数が終了したときの停止はもちろん予測できるが、紙詰まりなどの緊急停止は予測不能で突然訪れるからだ。
私も何度かそれを経験し、機械の停止に合わせて声のトーンを抑えるようになった。
3段目のランプが付くと同時に機械が止まった。
突然の静寂の中、配達員のやり取りが耳に入ってきた。
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