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「んなら付き合えよ。保健室でコーヒー位は出してやるから。」
先生は両手ともポケットに突っ込み屋上の入り口に歩いていく。
「ゴチになります。」
俺は少し駆け足で先生の横に並び歩く。
「二限目なんなの?」
「確か体育。春にしては今日は温いからな。やる気にならん。」
「ふーん。保健室着いたらさっきのお礼に同じ煙草の新箱一箱やるよ。」
入り口を抜けて、先生と並びながら階段を下り始める。
「おっ。気前が良いじゃん?なんか良いことあったか?」
恐らく煙草のストックがまだ机の引き出しにあるのだろう。
「良いことなんてねーよ。教頭はうぜぇしよぉ。保健室着いたら愚痴付き合えよ?」
「そんくらいなら。いつも世話になってるしな。」
朝から職員会議で教頭に相当嫌味言われたんだろうな。
あのハゲねちっこいから生徒男女共に嫌われてるし。
「なら急ぐぞ。あ、屋上に忘れ物とかねーか?」
先生が急に思い出したように此方に振り向く。
「は?何もねぇだろ?」
屋上には缶コーヒーと煙草、財布と携帯電話くらいしか持って行って無かったし。
「そっか?なら良いんだけどよ。」
先生は何かが引っ掛かっている様な顔をしている。
何か忘れるような物あったかな?
「そいや放課後は暇か?暇なら晩に私のアパート来て晩酌付き合えよ。」
先生の住むアパートは俺の家から徒歩で五分程だ。
「構わねぇけど程ほどにしてくれよ?」
先生は結構酒が強い。
俺が中学生の時は良く酔い潰されるまで飲まされていた。
「解ってるって。ついでに晩飯も作ってくれよ。私的に酒に合うものが良いな。あとスイーツ。」
「解った。材料は"病院"の後に買ってそのまま行く。」
「おう。久しぶりに美味い飯期待してるぜ?」
「先生料理上手いじゃん。特にハンバーグとかオムライスとか。俺が食った中ではピカイチだ。」
先生の作るハンバーグとオムライスは密かに俺の大好物だ。
オムライスの上のふわトロなオムレツとか、ハンバーグを切ったら中から溢れる肉汁とかプロレベルだろ。
「まぁ人に作ってもらう飯は自分で作るより美味く感じるんだよ。」
その後は他愛の無い雑談をしながら保健室へと辿り着いた。
保健室で雑談中に忘れ去られていたテツが泣きながら飛び込んできたのはまた別のお話。
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