第2話 失われるもの

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次の日 私は電車に乗って、産婦人科病院に行った。 受付を済ませると、2階に上がった。待合室の椅子に腰掛けて、レシピ雑誌を見ながら順番を待った。 30分後 「城内さん、城内結香さん」 ほとんど読んだところで、名前を呼ばれたので、診察室に入った。 「えーと、妊娠の継続で良いんですよね?」 「はい」 「じゃあ、奥にどうぞ」 私は前と同じカーテンの奥に入った。そして下着を脱いで、椅子に座った。 ああ、憂鬱だ。 椅子が回り、仕切りのカーテンの向こうに体がはみ出る。 「いっ…!」 痛いからもっと丁寧にやれ! 「はい、良いですよ」 私はすぐに服を着て戻った。 「じゃあ、そこに寝て」 前と同じ様に、大きな機材の隣のベッドに寝転んで、下腹部が見える様に服を捲った。 エコーを当てるために、妙に暖かいジェルをお腹に出された。 正直、ちょっと気持ち悪い。 「だいたい40週の計算だと、6/3ってところかな」 先生がエコーの位置を移動させると、小さな白い塊が見えた。 「3cm位かな…」 そう言ってスイッチを入れると、ドクンドクンと心音が聞こえる。 「はい、じゃあ良いですよ」 看護師さんがお腹を拭きながら言った。 私は椅子に座ると、DVDを渡された。 「これから成長を録画するから、検診の時に持ってきてください」 「はい」 「で、役所に行って母子手帳をもらって、次回から受付のときに診察券と一緒に提出してください」 「分かりました」 「次回から予約制になるから、診察券を受付の隣の機械に入れればできるから」 「はい」 「これ、今後の予定ね」 「ありがとうございます」 渡された紙を見ると、何月何日から何週目とか書いてある。 「はい、じゃあ今日はこれで」 「ありがとうございました」 私は診察室を出た。
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