第2話 失われるもの

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会計を済ませると、受付の隣にある機械に、前回作ってもらった診察券を入れた。 IDカードみたいになってるから、これで患者個人が分かるんだろう。 「次回、初回検診ですよね」 「え?」 振り替えると、看護師さんがいた。 「本日予定日を算出されましたよね?」 「あ、はい」 「では次回、初回検診になりますので、カードをこちらに入れてください」 挿入口に入れると、画面が変わった。 そして初回検診のところを看護師さんがタッチした。 「次回の予約からは、妊婦検診のところをタッチしてください」 「はい」 画面にはカレンダーが表示されている。 「ご都合の良い12週目以降の日付をタッチしてください」 私はもらった紙を見ながら、11/21を選んだ。 そして時間が表示されたので、10:00を選択した。 「これで予約は完了なので、次回からも同じ様にお願い致します」 「はーい」 「お大事に」 私は病院を出た。そして駅の反対側に回り、市役所行きのバスに乗る。 「次は市役所前、市役所前」 自動アナウンスの声で、私は降車ボタンを押した。 「ご乗車毎度ありがとうございます、次停まります」 しばらくするとバス停に着いた。私は完全に止まったことを確認すると、席を立った。 チャラチャラ 代金を支払って、前の扉から降りた。道路を渡って坂を登ると、市役所がある。 傾斜が急だから、結構辛い。 やっと登りきると、中に入り、受付の人に声をかけた。 「すみません、母子手帳って…」 「そちらの機械の、その他証明書発行を押してお待ち下さい」 「分かりました」 私は言われた通りのボタンを押して、順番を待った。 「303番の番号札をお持ちの方、1番の窓口にお越しください」 自動アナウンスの声に、自分の番号札を確認すると303番。 私は1番の窓口の椅子に座った。
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