第2話 失われるもの

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「母子手帳の発行をお願いします」 「はい、少々お待ち下さい」 受付の女性は奥から書類を取り出した。 「まずはおめでとうございます」 私は彼女につられて頭を下げた。 「こちらにお名前等、必要事項をご記入下さい」 私は紙に名前、住所、生年月日などを記入した。 「終わりました」 「はい、それでは少々お待ち下さい」 彼女は席を立ち、奥の方に行った。しばらく待つと、彼女が書類を持ってきた。 「ではこちらですね」 その中には、母子手帳とマタニティーマークのキーホルダーも入っていた。 内容物と、医療費助成受給券の説明を受けて終わり。 今日はバイトなので、そのまま店に行くことにした。 ちょうどバイト先は、さっき登った坂を下って道路を渡り、バス停に戻る。 すぐ先の交差点を曲がるとディーラーがあって、その隣だ。 私は裏口から入ると、そのまますぐ控え室に入った。 そして、さっきもらったマタニティーマークを鞄につけた。 母子手帳の記録も書いて、病院でもらったカバーに入れた。 「よし」 私は制服に着替えて、いつでも仕事に入れる準備を終えると、誰かが部屋に入ってきた。 「こんにちは」 「こんにちはー、ねぇ、見て見て」 私はマタニティーマークと母子手帳を見せた。 「おお、おめでとうございます」 「えへへー」 私は一通りみんなに見せびらかして、仕事に入った。 今日は心なしか、気持ちが弾む。 私は何事もなく、あっという間に仕事を終えて帰宅した。
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