2人が本棚に入れています
本棚に追加
叔父さんが声をかけると、じいちゃんは私を確認した。
「よく来たな…寒くないか?」
「大丈夫だよ」
私は少し大きめの声で、はっきり答えた。
「あ、叔父さん、こちら、私の旦那さんになる裕次(ゆうじ)さんです」
「あ、そうなの?結香の叔父の勝(まさる)です」
「あ、どうも」
私の彼もなかなかの人見知りだ。
「じいちゃん、どうなの?」
「あー、もうほとんど食事もしないね」
だいぶ進行している様だ。
「そっか…」
「結香、子どもいるんだって?」
「うん、そうなの」
「悠斗(ゆうと)や慶斗(けいと)を見てるから、知ってるかもだけど、大変だよ?」
悠斗と慶斗は叔父さんの子どもで、私の従兄弟にあたる小学生4年生と1年生だ。
二人の元気っぷりには付いていけない。
「いつから一緒に住むの?」
「安定期に入って、お正月空け位ですね」
私が彼を見たので、彼が答えた。
「ああ、それくらいが良いだろうね」
そんな話をしていると、今まで一人でよく分からないことを喋っていたじいちゃんが突然
「今、アパートとかを借りると、いくら位するんだ?」
「え、何?」
突然だったので、よく分からなかったみたいで聞き直すと、もう一度言ってくれ た。
「ああ、アパートとかね…いくら位?」
「2LDKで6万~7万くらいですかね」
叔父さんが聞くと、彼が答えた。
「6万か7万位だって」
じいちゃんに大きな声で教えてあげると
「あー、そうか…」
と言ってまた一人の世界に旅立った。
「こうやって時々通じるんだけど、基本的にこんな感じだからな…」
叔父さんは寂しそうに言った。モルヒネを投与されてるから、幻覚や幻聴があるみたいだ。
一人で何か喋っていたり、何かを掴もうとする仕草をしたりする。
本当にもう先長くないんだな…。
今日来ておいて良かったかも。
最初のコメントを投稿しよう!