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「ありがとね」
私は家の前で下ろしてもらって言った。
「じゃあ来週は13時頃に迎えに来るから、軽く何か食べておきなよ」
「分かった」
私達は手を振り合った。そして彼の車が見えなくなるまで見送ってから家に上がった。
「ただいま」
「姉ちゃーん」
リビングに入ると、遊び歩いている妹がいた。
いつも友達と遊びに行っていて、学校ですら、お昼ご飯を食べに行っている。
「木曜日カラオケ行こう」
「はあ?」
昨日行ったばかりじゃん。
「ママも休みだから送って行ってもらえるし」
「うーん…」
まあバイトも休みだし、暇だけど。ストレス解消にもなるし、お腹に力を入れなければ大丈夫かな。
「最近全然姉ちゃんと行ってないしー、赤ちゃん産まれたら行けなくなっちゃうよ?」
「そっか…うん、じゃあ行こうかな」
「やった!じゃあ11時からフリーね!」
「はいはい」
私は妹とカラオケの約束をして、寝室の布団に寝転んだ。
久しぶりに長い距離を移動したから疲れた。
ガラガラ
そこに、洗濯物を外から取り込むお母さんが入ってきた。
「じいちゃんのとこ、行って来たよ」
「そう、どうだった?」
「うん…本当に先長くないって感じだね」
「やっぱり?」
お母さんもある程度状態は分かっているんだろう。
「もうほとんど食事もしないって」
「そっか…年内持てば良いかな…」
「そうだね…」
産まれる命もあれば、失われる命もある。
こればかりは、誰も逆らえない。だから尊い。
「たまに通じるんだけどさ、ほとんど一人の世界だった」
私はじいちゃんの様子を思い出しながら言った。
「ああ、モルヒネのせいだね」
「うん、幻覚とか幻聴があるみたい」
「でもあれが切れると、かなり痛いんだって」
「末期だから、相当痛いんだろうね」
ガンにはよくあることなのかな?そんなに詳しいわけじゃないから、分かんないけど…。
「そろそろご飯作るから、手伝って」
「はーい」
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