第2話 失われるもの

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「ありがとね」 私は家の前で下ろしてもらって言った。 「じゃあ来週は13時頃に迎えに来るから、軽く何か食べておきなよ」 「分かった」 私達は手を振り合った。そして彼の車が見えなくなるまで見送ってから家に上がった。 「ただいま」 「姉ちゃーん」 リビングに入ると、遊び歩いている妹がいた。 いつも友達と遊びに行っていて、学校ですら、お昼ご飯を食べに行っている。 「木曜日カラオケ行こう」 「はあ?」 昨日行ったばかりじゃん。 「ママも休みだから送って行ってもらえるし」 「うーん…」 まあバイトも休みだし、暇だけど。ストレス解消にもなるし、お腹に力を入れなければ大丈夫かな。 「最近全然姉ちゃんと行ってないしー、赤ちゃん産まれたら行けなくなっちゃうよ?」 「そっか…うん、じゃあ行こうかな」 「やった!じゃあ11時からフリーね!」 「はいはい」 私は妹とカラオケの約束をして、寝室の布団に寝転んだ。 久しぶりに長い距離を移動したから疲れた。 ガラガラ そこに、洗濯物を外から取り込むお母さんが入ってきた。 「じいちゃんのとこ、行って来たよ」 「そう、どうだった?」 「うん…本当に先長くないって感じだね」 「やっぱり?」 お母さんもある程度状態は分かっているんだろう。 「もうほとんど食事もしないって」 「そっか…年内持てば良いかな…」 「そうだね…」 産まれる命もあれば、失われる命もある。 こればかりは、誰も逆らえない。だから尊い。 「たまに通じるんだけどさ、ほとんど一人の世界だった」 私はじいちゃんの様子を思い出しながら言った。 「ああ、モルヒネのせいだね」 「うん、幻覚とか幻聴があるみたい」 「でもあれが切れると、かなり痛いんだって」 「末期だから、相当痛いんだろうね」 ガンにはよくあることなのかな?そんなに詳しいわけじゃないから、分かんないけど…。 「そろそろご飯作るから、手伝って」 「はーい」
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