笑みは無い

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気づくと私は夫に引っ張られていた。病室に入るのを私の全身が拒んでいる。体が動かない。 怖い? 違う、嫌だ。怖いんじゃない。ただ、ただただ嫌。吐き気のするような拒絶感が私の体を襲っている。 それでも夫の力には勝てるはずもなく病室に引きずられると、幸雄が寝ているであろうベッドが左手にあった。 顔と思しき場所に白い布をかぶされていて、よくドラマであるシーンは本当にあるんだなと、どこか冷静に考えている私。 さらに引きずられベッドの目の前に立たされる。 そして、夫の手により、いつまでも取り去って欲しくない顔の上の白い隔たりが捲られた。
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