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私の息子が横たわっている。
病室のベッドに横たわっている。
その、顔中の筋肉を強張らせて、必死に笑みを浮かべながら横たわっている。
信じられなかった。
あんなにも明るかった幸雄が、あんなにも元気に育った息子が、青黒い痣を首に残して横たわっている。
見て、理解した。
目の前の“それ”は呼吸をしていない。
夫には聞いていた。でもどこかで理解できてなかったのだろう。
信じたくはない。
しかし、今、確実に理解した。
その時、私の中に塞き止められてきた感情が、少しずつ動き出す。
「ゆき、お……。幸雄ぉぉ!! 目を開けなさい……。目を――」
「おい、もうやめ――」
「幸雄!! 嘘でしょう!? ゆきお――」
「もう……もう、やめよう、な。幸雄が可哀想だぞ」
気づいたら私は息子にしがみつき、その体を必死に揺さぶっていた。
病院であることも、人が見ている事も忘れ、自分でも驚く程の声を上げながら。
少しの時間ベッドにしがみついていただけなのに、私の涙でベッドが大きく濡れている。
その夫の声に幸雄を揺さぶるのを止め、今度はすがりついて涙を流した。
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