第10話 生き霊(いきりょう)の島

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 真っ青な空の下、校庭の塀際に沿って、葉の無い緑のスッと伸びた茎に真っ赤な花をつけて彼岸花がポツンポツンと突っ立っていた。そんな風景を臨める開け放たれた窓からの暖かな日差しの中で、晶子は窓枠にのんびりとまる赤とんぼとにらめっこしながら、朝のホームルームの開始を待っていた。始業のチャイムと同時に、伊藤直美先生が印刷物の束を抱えて教室に入ってきた。  学校はいろいろと行事が続くもので、文化祭の後は修学旅行というのが秋葉高校二年生のお決まりコースとは、晶子が直美から配布された印刷物を見るまで分からなかった。だがこの日のホームルームの、直美はなぜかそれ以上にウキウキ気分だった。 「ハーイ、皆さん。修学旅行の資料が行きわたりましたか?今年の行先は沖縄デース」  生徒から歓声が起こった。しかし、晶子は沖縄と言われてもピンとこなかった。 「それで、スケジュールはそこにあるとおり三泊四日で、全体行動と、そして三日目の班別自由行動とがあります」 「班別自由行動は、どこに行っても良いんですか?」  廊下側の後ろから二番目に座る学級委員の伊藤良平が手を挙げて質問した。 「そうね、夕食前までの一日行動の範囲であれば原則オーケーです。皆さんはあまり沖縄の知識がないかもしれませんから、一応、そのプリントには模範コースがいくつか示されていますので、それをそのまま選択しても良いですヨー」 「俺は、沖縄の美味しいもの食べ歩きコースが良いな」  教室の真ん中の列の一番後ろにドッカと座るがっしりした体格の大川賢一がおどけた声で言うと、クラスは笑い声の後、急に沖縄の話で盛り上がった。 「班はどうやって決めるんですか?」  一番前の席の斎藤かおるが独り言を言うように質問した。 「班は原則五人か六人で、気の合う者同士自主的にまず決めて、それでも決まらない班はわたしが最後に残った人たちで決めマース」  直美はずっとウキウキ気分が続いているようだった。 「ところで、先生はなぜそんなに今朝は気持ちがハイなんですか?」  朋美が手を挙げて尋ねた。晶子もそれは不思議だった。
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