第10話 生き霊(いきりょう)の島

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「よく、聞いてくれたわね、川木田さん。実は、この前あった全国模試の結果が発表されたの。それでね、英語の成績については全国二十位までの上位者にご褒美が与えられることになったのよ」  修学旅行から全国模試の話に変わったので、急にクラスのムードは白けた。 「それと、先生の機嫌が良いこととどんな関係があるんですか?」  ホームルームの時間にしては珍しく、晶子も手を挙げて尋ねた。 「そう、実はこのクラスに二人、その二十位以内の生徒がいるのデース」 「えっつ!」  クラス全員が口をそろえた驚きの声だった。そして、生徒同士、お互いに顔を見合せた。 「それって、誰ですか?早く、発表してください」  良平の前に座るクラス一の秀才と目される有村秀太が叫んだ。 「そうね。それは、朝倉晶子さんと川木田朋美さんデース。朝倉さんが十八位、川木田さんが十九位でした。あとで、ふたりは職員室にいらっしゃーい」  再び、いやそれ以上にクラスは騒然となった。  職員室の直美を訪ねた晶子と朋美は、ほかの職員たちが注目する中、直美と一緒に校長室に入った。そこには、校長の唐沢育造が待っていた。晶子が校長室に入るのは、転入した時に保護者の南雲太郎と一緒に唐沢校長と面談して以来、二度目だった。  直美は晶子たちにコノ字型応接セットのソファーに座るよう促した。唐沢校長が校長机の近くのソファーに座り、直美は並んで座っている晶子と朋美に相対するように座った。 「いや、朝倉さんに川木田さん、本当に良い成績でした。大変立派です」  晶子が(ジャムおじさんに似てる)と思う赤ら顔の唐沢校長はそう言うと、喜色満面で直美の方にチラリと視線を送った。 「えーっ、それで朝倉さんに川木田さん。あなたたちへのご褒美なんですけどね。それは、今度、沖縄で行われる『島嶼(とうしょ)サミット』に全国模試上位の高校生二十名がオブザーバー参加できることになったの。これは、外務省の肝いりでね」 「伊藤先生、島嶼サミットって何ですか?」  朋美が質問した。 「日本をはじめ、オーストラリアやニュージーランド、パプアニューギニア、トンガなど太平洋の島国の首脳が集まって、経済開発や教育、安全保障などいろいろな分野で協力ができないかということで、会議を三年に一回開いているのよ。今年は沖縄で開かれるわ」
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