第10話 生き霊(いきりょう)の島

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「首脳が集まるって、日本は総理大臣が参加するということですか?」  晶子が尋ねた。 「そうよ。開催地が沖縄だし、当然、いまの柿本甚五郎首相が参加されるわ」 「ライブで総理大臣を拝めるのね。それって、名誉なことですよね」  朋美が乗ってきた。 「そうね。わたしはそれよりも、あなた方が英語で素晴らしい成績をあげてくれたことの方がうれしくて、うれしくて…」  涙ぐむ直美の言葉を遮るように唐沢校長が晶子たちに訓示を垂れ始めた。唐沢校長の訓示は秋葉高校の歴代優秀者の話に及び延々、半時間ほど続いて、そのあと直美が事務的な連絡をした。 「それで、話をもとにもどしますけどね。明後日午後二時半から、外務省であなたたち高校生の島嶼サミット参加者に対して『任命式』があるの、それにふたりとも参加してほしいの。それから、そのサミットの日程だけどちょうど、この学校の修学旅行と少しダブるのよね。それで、唐沢校長にもご相談したんだけど、班単位の自由行動の日があるでしょう。その日に、あなたたちふたりはそのサミットの方に参加してほしいの。その日のサミットは開会式とそのあとに、教育問題が討議されるわ。ぜひ、あなた方にそれを体験してほしいの」  そしてその任命式当日の午後、晶子と朋美はクラス皆の声援を受けて、外務省に向った。地下鉄を霞が関駅で降りて階段を上ると外務省の前だった。晶子たちが門の守衛に生徒手帳を見せていると、後ろから声を掛けられた。 「晶子さんでしょう。あら、朋美さんも、やっぱり島嶼サミットで来たの?」  晶子と朋美が振り返ると、声の主は博多人形のような顔立ちの光明寺凛子だった。 「凛子さん、あなたも全国模試で二十位以内に入ったの?」  晶子が尋ねた。 「わたしは二十位。ギリギリね。もう少し勉強しないと」  そう言って、凛子は舌をペロリと出した。 「凛子さん、わたしのことは晶子と呼んで」 「そうよ、わたしは朋美でいいわ」 「じゃあ、わたしも凛子と呼んでね」  三人は、連れ立って外務省の建物に入り受付で用件を告げた。受付の女性の指示で、奥のソファーに座っていると、男性職員が現れて晶子たちはエレベーターを使って大会議室に通された。
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