第10話 生き霊(いきりょう)の島

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「いいや、彼ら影の軍団とはまったく異なる『姿なき軍団』だったのじゃ。そして、守護大名たちに最も恐れられた暗殺集団であった。我が光明寺流三代目の光明寺玄一郎は、お仕えする主君の命をその暗殺集団から守ることを託され、想像を絶する鍛錬の中からこの『破邪の剣』を編み出したといわれる」 「そんなこと、言葉だけでは信じられません」 「それなら、ここでこの凛子と立ち会ってみてくだされ。もちろん、あなたの秘剣を使っての話じゃが」 「そ、それは…」  晶子は、自分が半分生霊族の血を受け継ぐ透明人間であることを、玄斉や凛子に知られるのをためらった。しかし、もはや晶子に逃げ道はなかった。晶子の隣に座る朋美も仕方がないという眼をしていた。  凛子が出してくれた白の剣道着と防具をつけて晶子は竹刀を手に、凛子と対峙した。玄斉は道場の上座に正座したまま鋭い眼差しで二人を注視した。朋美は道場の板壁の側に座布団を持っていきその上に正坐していた。道場は古く広かったが床板は黒光りするまでに磨きこまれ、竹刀を携えて合い対峙するふたりの姿が映し出されるほどであった。 「それでは、はじめっつ!」  玄斉の号令が静寂を破った。一礼の後、晶子と凛子は真剣勝負のような緊張感でお互い竹刀を正眼の構えにとり間合いも広く取って、道場内を円を描くように回った。 「では、秘剣をお見せします」  そう言うと、晶子は全身に不可視光線を帯びた。またたくまに防具をつけた晶子の姿が消え失せた。ただ、竹刀だけが鍔の部分から先を残して空中に浮かんでいた。 「おおっつ!」  玄斉は初めて見る秘剣の正体に思わず身体を前に乗り出して、驚きの声を発した。それ以上に驚いたのは凛子だった。玄斉から繰り返し繰り返し教え込まれた秘剣のイメージは凛子の頭の中にあったが、現実の秘剣を目の当たりにしてその迫力にたじろいだ。 (竹刀が宙に浮かんでいる。相手の動きがまったく見えない。これが本物の秘剣なのね)  凛子は後ろに下がり、晶子との間合いを広げようとした。その瞬間、晶子の竹刀が凛子を襲った。 「パン、パン、パン」  凛子が必死の防御で晶子の竹刀を打ち返した。凛子はまたたくまに汗にまみれた。
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