01:驚きはすぐそばに-2

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 そんな中、私は掲示板に懐かしい名前を見つける。まぁ、懐かしいとは言えせいぜい一ヶ月ぶりぐらいなんだけども。  しかし、何かと流れの早いネットゲームの世界において、一ヶ月というのはかなり長目のブランクと言っていい。  ねぇ、銀ちゃん?ずいぶん久しぶりじゃない! 久々に顔を出していた仲間の名前は銀次郎。通称、銀ちゃん。私たち『ぬこのしっぽ団』初期メンバーの一人だ。  このゲームには『一定の確率で○○できる』という、言わば運次第のスキルが結構ある。 その時のチェイン数などによって確率は変動するけど、結局、運は運なのだ。  でもなぜか銀ちゃんは、そういう“運次第スキル”の成功率がやたら高い。 だから私たちは彼のことを、 『神の手』 『勝利の女神を口説いた男』 『ゲームで運を使い果たした男』 などと、好き勝手に呼んでいる。 いわゆる、いじられキャラでもある。 「ひめちゃん、久しぶりです!サービス続行にもなったし、リアルも落ち着いたし、今日からまたがんばりますよ!」  以前から少し堅苦しいきらいのある銀ちゃんのその書き込みを、私は複雑な思いで読んだ。  確かに、実生活の忙しさもきっとあったんだろう。  でも、たぶん、ホントにたぶんだけど、今日、このタイミングで銀ちゃんが帰って来たのには、何か別の理由があるように思えてならなかった。  すぅ太さんの、脱退だ。
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