九龍の帰還

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「おいっ、貴様等、俺が誰だかわかってんのかっ!?」 「えぇ。よく存じ上げております、誰よりも。私はあの日から貴方(あなた)を忘れた日は一日たりとも御座いません」 「お、お前、あの時の女か……。よくも、よくも俺を……」 アルフレッドが剣を振り上げオーラを集め始めると、薙刀を構えていた侍女達が一斉に歩み寄った。 多方向から巴型(ともえがた)と呼ばれる反りの浅い形状をした刃先を伸ばし、その峰で押さえつける様にして体の自由を奪った。 腐っても解放軍のリーダー。通常であれば侍女達が束になっても敵う相手ではないが、九龍の一撃により胸骨柄及び周囲の肋骨を砕かれ戦闘など不可能だ。高価な回復アイテムを使ったようだがダメージの残存は明らかで、生かさず殺さずのような状態。 もっとも、九龍の意思によってこのような絶妙な状態に仕上げられているのは言うまでも無い。 「や、やめろ……。お、おい、俺がいなくなったら解放軍はバラバラになるぞ。そうなったら、サタンを倒すことなど……」 日向は長刀の中心部分を両手で掴み、8の字を描くように動かし始めた。 「そんな心配は、不要。この世界に存在する悪漢共は全て御屋形様が成敗して下さいます」 回すスピードは徐々に増していき、日向の頭上で大きく円を描くように振り回される。 「門下生に手を下したのは、貴方。この世で私が最も憎いのも、貴方」 「ま、待て。この世界の脱出なら俺がバンズに頼めば……」 表情一つ変えず、日向はびゅん、びゅんと強い風切り音を奏でながらアルフレッドへと接近していく。 「それも、不要。未来は、御屋形様が必ず切り開いてくれますから」 「やめろ。やめろって……おいっ、おいっ!!」 「九龍屋敷下、門下生63名の無念。今、ここで晴らさせて頂きます」 日向は飛び上がり、一気に間合いを詰めた。 「――ご覚悟っ!!」 「やめろぉぉぉぉぉ!!」 横一閃。 遠心力を乗せた、いや、日向の想いが乗った一撃が横一文字に振り切られると、恐怖と苦悶の表情を浮かべたままのアルフレッドの頭部が跳ね上がった。 半秒ほど遅れ、噴き出した鮮血がボタボタと艶のある床に降り注ぐ。 日向は得物を収め丁寧な所作で座し、転がるアルフレッドの頭部に向け一礼した。
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