第一章 ー旅立ちー

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 原始の海に生成された単純な有機化合物は、それ単体では脆弱なモノでした。 絶え間なく降り注ぐ宇宙線は、それを粉々に破壊しました。 しかし、ある時。  その小さな欠片は一つ、また一つと集まり、次第に大きなコロニーを形成するようになりました。そのコロニーは他の単体を吸収することで、自らの存在を維持しているかのようでした。 単体から群体へ。 弱者が身を寄せ合うかの如く。  いつしかそれは、生存の意志を示すかのように、その姿は長く連なった鎖。或いは絡み合う二匹の蛇。  それは、“モノ”から“者”に昇華した姿と言えるかもしれません。  思考する器官さえ持たないはずのコロニーが、己の生存を賭けた遥かな旅を始めた瞬間。 そこに“意志”と呼べるものは見いだせません。  しかし。もし仮に、その『行為』に名を付けるとしたら… 『純粋な生存本能』若しくは『征服者への第一歩』  いや、もっと別な…    今少し、“彼等”の旅を見てみましょう。
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