美瑛

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『柊、この人は、柊のおじいちゃんになる人だよ。』 豪太がそう言って柊の腕を掴み、強引に島田の前に出そうとする。 柊は踏ん張り、それに抵抗した。 でも、父親の手の力には抗えず、前に出されてしまった柊は堪らずに、うわあん、と泣き出した。 島田が驚き、由紀恵は慌てる。 『なんだよ、情けねえ奴だなあ!』 豪太は少し乱暴に言い、柊を抱き上げた。 甘えん坊の柊は、父親の肩に頬をくっつけ、親指を吸った。 そんな柊の可愛らしい様子を、由紀恵と島田が温かい眼差しで見守る。 ーーあ…… ふいに秋菜は目頭が熱くなった。 きっとこんな家族の姿はどこの家でもよくある、ありふれた光景だろう。 しかし、幼い頃の秋菜と豪太には与えられなかった。 柊はこの家で皆に守られ、大きくなるのだ。 昔、豪太が望んだ祖父母のいる家庭でーーー
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