それぞれの想い

12/13
前へ
/115ページ
次へ
「うーん。でもなあ…」 豪太の反応が良くないので、由紀恵は助けを求めるように秋菜の方を見た。 「ダメよ!」 つい、尖った声が出た。 秋菜は苛立っていた。 …なぜ、島田の為に、母が犠牲にならなければならないのか。 「島田さんて一体、何を考えているの? 夫婦になった途端、腎臓下さいって何? 二世帯住宅たててやるなんて言っちゃってそれで、私たちを釣ろうとしてるんじゃない? 気持ち悪いよ!」 「秋菜。」 豪太が肘で秋菜の脇を突く。 言い過ぎだよ、という意味で。 中2の春、秋菜が朝日山学園に入所する原因となった由紀恵の体調不良ーー 様々なストレスから、由紀恵は健康を害し、痛々しいほど痩せてしまった。 布団から起き出すことが困難になり、笑顔が消えた。 ーーママが死んでしまったらどうしよう… 私は1人ぼっちになってしまう…… 夜も眠れなくて、たびたび夜、由紀恵の死ぬ夢を見て、泣きながら目覚めるーー もうあんな思いは二度嫌だ。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加