遠い夏の日

2/6
116人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
『何かあったら困るのは、女の子だから。本当に大切なら、必ず着けてあげてね。』 蕎麦屋でアルバイトはしていたものの、小遣いの乏しい豪太が決して安くはない避妊具をいつも持っているのが、秋菜には不思議だった。 結婚してから、豪太が告白した。 あれは由紀恵が用意し、豪太に手渡していたのものだとー ーーそうだ…… 秋菜は気づく。 母がいたからこそ、豪太との愛を大事に育むことが出来たということを。 「ママはダメね…」 由紀恵の瞳は涙で潤み、今にも溢れだしてしまいそうだった。 震える人差し指の先で涙を押さえる。 「こんな風に、今でも自分のことで精一杯なんて私は母親失格よね…」
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!