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「ねぇ、ギッシー……ぼく、好きな人ができたよ」
中学生の頃、小川が唐突にそんなことを言い出した。
「そっか。そいつはおめでとう」
心底どうでもいい、というふうを装ってオレは小川に言葉を返す。
小川が誰を好きか、なんて昔から付き合いのあるオレには言われなくても分かりきっていて、けどそれを悟られないように、オレはきっとそんなふうを装っていた。
「けど、悩みもあるんだ」
「恋の相談ならやめてくれよ」
そういうのが嫌いだって小川も知っている。故意にやってるのだとしたら、憎たらしいが、こいつは天然だから、本当に気づいてないのかもしれない。
「違うよ。そのぼくの好きな人はさ――さんだから」
好きな人の名前を言うのでさえも小川は恥ずかしがった。「えっ、なんて聞こえない?」とからかうように言うのも面白いがオレらしくもなく、
「だったらお前がヒーローになるか?」
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