峰岸 佑太 その6

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「ちくしょう……ちくしょう……」  オレは悔しがる……ふりをしていた。  本当は心の底からおかしくて、おかしくてたまらなくて、笑いを我慢していた。  引っかかった。  オレが話したことを疑う連中は出てくる。そしてオレたちがコイントスを最後のほうにやろうとすれば、当然、疑っていた奴らはこう思う。本当は向こう側に行けば死ぬんじゃないか、と。  当然だ、謎を解いたオレたちが生きることに消極的なら、まずはそう疑うだろう。だからそう疑ったデブはオレたちに先にやることを提案する。  当然、オレたちは断れない。断れば、向こう側に行くと死ぬと断定しているようなものだ。だからその提案にオレは乗った。するとデブは動揺する。もちろん、そんな素振りは微塵に見せていないだろうが。  するとデブは少しでもこう思ってしまうのだ。もしかして本当にあっち側が生き残る側じゃないんだろうか、って。そしてオレはそうだといわんばかりに不正をする。  当然、コインをすり替えたことが分かるように、コインを入れ替えた。そこにぬかりはない。もし、すり替えに気づかれなければオレは自殺するようなものだ。
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