岸和田 清 その1

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 扉を開けると、見えてくるのは死体。柏に殺された飯塚の死体。悲壮な表情のまま固まった飯塚の無念が窺えるが、正直あまり見ていたくない。  ノの字型の通路を進み、もうひとつへの部屋への扉に近づくと喘ぎ声。  副会長の声。思わず耳を塞ぐ。悔しさと愉悦が混じったその声は、僕と美知子の情事に比べると、嫌悪感しか抱かない。  そう、扉の向こうで副会長は、犯されているのだ。番場に。  徹底的に殴られて、暴力によって服従させられた副会長は、番場の言いなりになるしかなかった。  逆らえば、自分を守ろうとした柏が殴られるし、さらに番場は他の女子を犯そうとした。それで副会長は番場に屈服した。その犯されそうになっていた女子のなかには美知子もいた。  屈服なんて言うと悪い言い方だけれど、良い言い方(?)をすれば副会長は自己犠牲でみんなを救ったのだ。その結果が、これだけれど。  僕は意識的にその艶のある声を意識の外に追いやって、扉をノックする。
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